意識普通学生へ。 
学生応援メディア
ホーム

20言語を学んだ語学オタクの単語暗記法:戦術編

2020.04.30

著者情報

竹下りや

竹下りや

高専で生物化学を学んだのち進学した大学院で言語情報学を研究している、20近くの外国語を学んだ(≠覚えた)語学オタク。好きな文房具は付箋。

前回の記事では単語を覚えるにあたっての戦略を紹介しました。

では、具体的な「戦術」のお話をしてゆきましょう。

まず、何かを覚えるにあたって、「理由付け」というものは非常に大事なのです。
例えば、じゃあ、クイズ!

音楽の楽譜に用いられるト音記号はあるアルファベットを図案化したものです。そのアルファベットとは何でしょう?

これ、正解は「G」なんですって。知ってました?
もし知らなくても大丈夫、今からお話する理由を知れば一発で覚えられます。

ドレミファソラシ……という音階はフランス語やイタリア語といったロマンス諸語での言い方で、日本古来の言い方ではイロハニホヘト……と言われています。これが英語やドイツ語ではABCDEFG……と表され、イがA、ロがB、といった風に対応しています。そうやって対応させていったときに「ト」は「G」に対応するため、アルファベットのGを図案化した記号が「ト音記号」と呼ばれているのです。

ちなみにドはハ(C)ですね。

この理由付けを知っていれば、また上記のクイズに出くわしたとき、(イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、トでトは7番目、ABCで7番目は、A、B、C、D、E、F、GだからGだ!)と分かるわけです。

理由付けの大事さには分かっていただけたとして、それが英単語暗記にどう適用できるのか、という話をします。

本当は方法なんてどうでも良くて覚えられればオールオッケーなのですが、ありがちな戦術をいくつか上げておきます。これらに該当しないからと言って全然だめではないし、むしろ漏れがあったら教えてほしいくらいです。教えて下さい。

ありがちなのはこれらの戦術です。

1.語源
2.派生
3.身の回り
4.例文イメージ
5.類義語・対義語
6.単語の個性
7.こじつけ
8.実際につかう

詳説しましょう。

戦術1:語源で覚える

英単語の語源というものは非常におもしろいものです。
例えば

herbicide(除草剤)

これは「草」を意味するherbに、ラテン系接辞の-cide(切る)がくっついて「草を切るもの」という意味合いを出しています。
このように、語源を掘り返せば、その単語がその綴りたる所以を知ることができるのです。

そんなんどうやって分かるねん。

「~ネン」で終わる外国人名は大体フィンランドの名前のようですね。

英和辞典の単語の項目の最初の行ーーものによっては最後かもしれませんがーーそのあたりに、もしそれがいい辞典なら語源が載っているはずです。
私の手元にある『ジーニアス英和辞典』には”decide”の項目にこのようにあります。

【原義:切り(cide)離す(de)→けりをつける→決心する】
(ジーニアス英和辞典 第4版 出版:大修館書店 より引用)

この部分から接辞の知識を得ることによって、頭にde-のつくdecline,destroy,destruct…やcideを持つsuicide,genocide…を初見でも容易に覚えられるのです。意味はぜひ辞書で見てみてね。

接辞の知識は、初見の単語を初見じゃなくすることができるのです。

戦術2:派生

戦術の「語源」とも若干被りますが、ある単語から別の単語が派生してできることもありますよね。それはぜひ一発で覚えましょう。
例えば

ceaseless(絶え間ない)

これは「終止」という意味の”cease”に「量が少ない」という意味の“less”がくっついたものですね。それはそう。ですが時々おもしろい派生があるのです。例えば

considerable(考慮に値する、相当多くの量の)

これは「考える」という意味のconsiderに可能を意味するableがついたものですが、「考慮に値する」という意味に加え、そこから派生して量的に多いという意味が加わっています。
これには諸説ありますが、「考えさせられる」→「決心に悩まされるほど」→「多くのものを動かす」→「量的に多い」という派生が有力なようです。

高い時計を買おうか悩む、そんな人の姿が目に浮かぶようですね。

戦術3:身の回り

英語は外国語の中でも、間違いなく圧倒的に日本国内で目にすることの多い言語です。ちなみに私は日本国内でフランス語やドイツ語を見つけたら、ガチャでレアを引いたような気分になってハッピーになります。
洗剤に書いてある「フローラル」、結果に「コミット」、IT社長がよく言っている「リソース」、いろんなサービスの「アンバサダー」…知らないカタカナ語を見たら、アルファベットに変換して意味を調べてみましょう。

カタカナ語としての使われ方と、英語としての使われ方に少し違いがあるのも一興です。

戦術4:例文イメージ

これは非常に汎用的であり、また文脈の中で覚えるという古典的な語学の身につけ方にも通ずるやり方です。
単語帳には単語だけでなく、例文の載っているものがほとんどですよね。その例文を頭の中でイメージして、その情景と単語をリンクさせるのです。英語と和訳、文字情報同士の連結ではなく、ある情景とそれを描写する二つの言語での単語を結びつけるのです。
例えば、ある単語帳にはこのような記述があります。

obnoxious [形]とても不快な
(中略)
There was an obnoxious smell in the room.(その部屋には不快なにおいが漂っていた)

(『キクタン 英検1級』一杉武史 出版:アルク P130~P131)

obnoxious、不快な、obnoxious、不快な、obnoxious、不快な、と繰り返すよりも、不快な匂いが漂っている部屋をイメージして、「ああ、そういうことをobnoxiousというのだな、たしかに、日本語で言えばすごく不快な、といった感じか」と、文字上で覚えるというより、「身につける」ことができるのです。

イメージで覚えることは、言語を覚えるだけでなく、身につけるのに不可欠なことです。

戦術5:類義語・対義語

単語帳には例文の他にも、類義語や対義語が載っていることがよくありますね。例えば

palatable [形]おいしい(≒delicious)

いや、それdeliciousでええやん。
なので、”palatable”をまた見たり聞いたりしたときに、(あ、deliciousのやつだ)と思えばそれで意味は理解できるのです。英語を書く、話す際にも、palatableなんて使わなくても大丈夫です。言えたらかっこいいけど、deliciousで意味は通じます。

すでに知っている概念に時間を取られないようにしましょう。

まあ、類義語の間の微妙な違いを探してみるのもおもしろいですがね。

戦術6:単語の個性

時々個性的な単語ってありますよね。有名なのはこれですね。

indict [動]起訴する

これ、なんて読むと思います?/ɪndάɪt/、まあ、カタカナで言えば「インダイト」といったところですかね。cはどこに行っちゃったんでしょう。
こういった単語の「個性」を知っておけば覚えるのは楽なのです。次”indict”を見たときに(あ~こいつね、読み方がすごいよね。)といった感じですぐ思い出せます。初対面で個性的な自己紹介をした人が覚えやすいのに似ていますね。

あと、僕が好きなのはこれですね。

eerie [形]不気味な、薄気味悪い

語頭にe二つってなかなか英単語には見られないですよね。それこそちょっと「薄気味悪い」感じがしないですか?

個性的な単語とはすぐに仲良くなれる。単語の個性を見つけよう。

戦術7:こじつけ

もう無理、上記のいずれの戦術も使えない、そんな強敵に立ち会ったときはぜひ、自らの持てる想像力を駆使してこじつけるのです。例えば

awkward [形]ぎこちない

身の回りでこんな単語見ないし、「ぎこちある」なんて反意語もない。どこが接辞かもよくわからん。困った。
困ったらこじつけタイムです。”awkw”のあたりがすごく挙動不審でオロオロしている感じがしないですか?しないですか。でも私はするので勝手に話を進めます。
それにたどり着けばもう勝ちです。awkwardは「ぎこちない」。間違いなく覚えられます。

覚えられればオールオッケー。どんなにカッコ悪くても覚えられれば勝ち。

戦術8:実際に使う

実は、この記事で”herbicide”、”palatable”を初めて使ったので覚えました。
記憶のベースはアウトプットと繰り返しなので、いろんなテストを受けたり、時々最近覚えた単語を頭の中で思い出してみたり、さまざまな手法でアウトプットを試みてください。
小テストは長続きしないのでオススメしません。長続きするなら効果は大きいと思いますが。

持っておくだけじゃ不十分。それを引き出しから取り出せたら最高

いちばん大事なこと

楽しむことです。友達になった単語が多ければ、その言語が楽しくなるはず。
友だちになるその過程すらも楽しんでしまえば、あなたもきっと語学好きといえるでしょう。

関連記事

page top